ドラゴンクエスト [ #07 アフォーダンスデザイン ] |
米島 : あとさ、あの、さっきせっかく「アフォーダンス・デザイン」っていうカタカナを使ったので、解説しようと意気込んでるんですけど、質問はないんすか。お兄さん。 瀬上 : え、ああ。いえ、質問したほうがいいのかなぁ、とちょっと思ったんですけど、知ってるんで。 米島 : そうか。あなた、デザインとかやる人だもんね。確か。 瀬上 : はぁ、まぁ、人に言うほどのものではありませんけれど、最近はウェブデザインがちょっとした趣味と化してきてるんで。デザイン関係の用語なら多少は…… 米島 : そう………なんか、ちょっと話す気力がなくなっちったよ。オジサンは。じゃあ一応、ドラクエとアフォーダンス・デザインがどんな感じに絡むか説明をしてみて下さいな。 瀬上 : ああ、はい。なんかすみません。 米島 : いえいえ。どうぞ。 瀬上 : ええと、つまり、そもそもアフォーダンス・デザインと言うのは何かっていうと、説明のいらないデザイン、みたいなものですよね。 米島 : おお、なんか、なにかの教科書読んでるような感じの見事な説明だ。っていうか、ギブソンとか、複雑系とかで扱われる用語だなんて知らなかったよ。 瀬上 : なるほど。言われてみれば確かにそうですね。 米島 : なるほど、なるほど。それは確かに。なかなかよい指摘かも知らんネェ。
瀬上 : それはどうも。 米島 : この疑問に対してはちゃんと答えられるかどうか、あんまり自信がないんだけれども、まず、形式的な反論みたいなことから言っていくと、別にアフォーダンスデザイン至上主義みたいな考え方をする必然性というのはないんじゃないか、と。 瀬上 : えーと、つまり、もう少し詳しく言うと? 米島 : んーー、つまり、そうだなぁ。例えばさ、普通、ものを考える時とか人にものを話す時って、言語を使うよね。まぁ、ものを考えるのをビジュアル中心で考える人というのもいるにはいるけれども、大半の思考は言語によってなされるものだし、ものを話すのに口から画像を吐き出すのは空也上人像ぐらいのもんで(笑)、普通の人は自分の母国語を使ってしゃべることしかできないよね。 瀬上 : はい。 米島 : でさ、ゲームにのめりこんでいく過程の類型の一つには、そのゲームの内容についてうんぬんかんぬんと考えていって、「あそこをああすれば」とか「あそこであれを買って、あそこであれを使って」とかって考えてゆく過程というものがあるよね。 瀬上 : ええ。はい。それはまぁ確かに。 米島 : と、まぁつまりこういう側面というのを考えて行くとだねぇ、言語をベースにして語られて、プレイヤーがゲームの中の言葉を覚えてゆくようなゲームの在り方というのは、今挙げたようなゲームへののめりこみかたを促すのには最適なのではないかな、と。ゲームにのめりこんでいろいろ考えてゆく過程では言葉というものの力を借りなければいけないし、人とコミュニケーションを取る際にも互いにそのゲームの言葉を覚えている状況の方が理想的だよね。 瀬上 : なるほど。深みにはまらせてゆくためにはテキストベースの方が有利だろうと。 米島 : うん、まぁそれが一つ。 瀬上 : ああ、ええ、そういえば、あれはわかりにくかったですねぇ。カーソルをどこにあてればいいのかとか、主人公がそもそもグラフィックのどの位置にいるのかとか、全然わからないぞ、という感じになることがけっこうありましたね。 米島 : うん、まぁでもさ、FF7のデザインが不評であるのは仕方ないけど、アレはアレで結構斬新だったというか、新鮮だなぁという感じがしたし、ま、一般受けは悪いかも知んないけど、オレはアレはけっこう、キレイだったし実験的でよかったんじゃないかなぁと思ってるのね。ま、全部が全部あんなデザインの方向性を走られたら困るけどぉ、まぁぁ一つや二つああいうものがあってもすごいキレイだったし悪かぁないんじゃなかろうか、と思うのね。うん、はい、それがもう一つね。 瀬上 : ? 米島 : えーと、だからぁ、ほんとに思い付きみたいな話だからあんまりちゃんと聞いてもらっても困るんだけど、例えば、リアリズムの究極を目指したような本当にリアルな作品があったとしてね、そういう世界の中で、物体や生物を名指すものとしての固有名詞みたいな言葉っていうのはどこまで重視されるんだろうか、ということを思ったのね。 瀬上 : ええ。 米島 : あれって、まぁ結構リアルタッチの絵だけれども、デフォルメ化された絵というのも同時に登場するよね? 瀬上 : そうですね。「ゴリ」とか「このキツネ」とかって、人間をデフォルメ化して遊ぶことで作品をうまく成立たせてますよね。 米島 : そうそう。そういった形でのデフォルメの遊戯みたいなものっていうのはリアルタッチの中では出てこないっしょ? 瀬上 : うーん、まぁ確かに。かわいいニックネームとかだけで聞き知っている人を、突然リアルな本人を見たらちょっと面食らう、みたいな。そんなことですか? 米島 : うーん?そういうことかなぁ。オレ自身何を言いたいのか微妙にわかってないのが困りものなんだけれども、デフォルメ化して、キャラクター化して「かわいい」とかっつって遊ぶのに言葉の力って絶大だよね、みたいなことを思ったんのよ。一瞬。 瀬上 : ああ、はあ。なんとなくわかります。そういうのってなんか言葉抜きにしては成立たない遊びではありますよね。似顔絵とかのイラストとかでも成立する部分はありますけれども、言葉抜きにしては皆で遊べるものにはならないんじゃないかという感じはしますね。 米島 : そう、なの、かな?うーん、まぁいいや。なんか、これ以上立ち入った話は言語学者とかインターフェイスの研究者バリバリの人じゃないと、なんともかんともという感じがしてくるので、この話はこのくらいでやめよう。ね。 瀬上 : ああ、はい。それじゃあ、このくらいでこの話は。 |
2001-7-7 |
Page1 ドラクエファンクラブ
Page2 視点の重層化
Page3 生活の場
Page4 生活の積み重ね
Page5 世界の広さ
Page6 名前を覚えること
Page7 アフォーダンス・デザイン
Page8 見つめ返してくるもの
Page9 三種類の視線+1
Page10 最後に