ドラゴンクエスト
 [ #02 視点の重層化 ]


米島 : 冷たいなぁ(笑)
 じゃあ、本題に入りますけれどね、堀井さんが何を考えているのかな、という形で何回かゲームをやりなおしてみてね、まず、あんまり誰も言っていないんだけれども、堀井さんのね、ここ10年間ぐらいね、ずっと一貫しているRPGの作り方というのがあって、それが何かっていうと、「ゲームの中の世界の重層化」ってことね。

瀬上 : 「重層化」ですか?

米島 : そそそ。「重層化」。
あのね、要するに世界を重ねてるんすよ。二つとか三つの世界を一つに重ねてるのね。

瀬上 : ?

米島 : 例えばー、ドラクエ1はドラクエ2の世界の昔の世界でしょ。それでさらにドラクエ3は、ドラクエ1の更に昔の世界でしょ。ここでさ、プレイヤーはドラクエ3の視点から見た世界と2の視点から見た世界と1の視点から見た世界を重ねてる見るわけだよね?

瀬上 : いいたいことはだいたいはわかるんですけれど、「重ねる」というは?

米島 : うーん。だから、例えばだねえ、一番わかりやすいのは5だよね。まず少年時代をすごすでしょ。で、それから青年時代になってから、少年時代にすごした町をまわるよねえ。

瀬上 : ええ。

米島 : そこでさ、青年になった主人公は、かつて少年であった自分が過ごした日々というものを頭におきながらね、町を見て回るわけじゃない。そこで、青年の頭の中には、少年期の彼の世界というものが存在していて、それで、町を見て回ることによってで青年の頭には現在の現実世界というものが、かつての彼の記憶している世界のイメージに対して影響してくるわけよ。例えば、少年の頃に彼がすごしていた町が廃墟になったのを見て彼はショックを受けるわけじゃない。あるいは、ガールフレンドのいた町に行ってみたら、ガールフレンドがどこかに行ってしまっていて、誰も自分のことを知らない町になってしまっているわけじゃない。

瀬上 : ああ、はい、昔のイメージの中に現在のイメージが重なってくる、と。

米島 : そうそう。そういう意味で「重なる」のね。

瀬上 : なるほど。1,2,3と5はわかりましたけれども、他の作品についてはどうなんですか?

米島 : 例えば4はね、第一章から第五章までわかれてるでしょ?それで五回程、視点が変わるわけじゃない。王宮の戦士から見た世界があって、旅の商人から見た世界あって、それで勇者から見た世界があるわけでしょ?

瀬上 : はい。つまり、4の場合は時間軸でイメージを重ねるのじゃなくて、主人公の立場をかえてイメージを重ねていくわけですね。

米島 : まあ、だいたいそういうことね。で、7は過去と未来からの視点だから、これもわかりやすい。6の場合は少し特殊で、夢の世界と現実の世界、という構成をとってるのね。イメージがかさなるというよりも、本当に世界が重なっているわけ。

瀬上 : なるほど。

米島 : あと、ドラクエじゃないけど堀井さんが手がけたクロノトリガーというゲームも、未来、現代、中世、古代、超古代、とタイムスリップができて、世界が重層化されていたわけよ。

瀬上 : おお、ほお、なるほど。

米島 : わかった?

瀬上 : ええ、基本的なことはわかりましたけれど、その重層化、というのはそんなに、何か効果が期待できるんですか?

米島 : 当然、当然。
 5の場合はまあ、だいたわかってもらえたと思うけれども、「かつて自分の知っていたものがこんなふうにかわってしまった」というのが、非常にショックなわけでしょ。それと同時に、「かつて神童と呼ばれたA君が、今は国を担う宰相として活躍している」というような楽しみがあるのよ。
 例えばさ、マンガとかで、第一部とかが終わって、第二部がはじまるときとかに、第一部のヒーローとかヒロインとかが、出てきたら「おっ!」みたいなのってあるでしょ?

瀬上 : あーあーはいはい。

米島 : 基本的には、そういうノリかなあ、それ以上はやってみてくれ、としか言いようがないから。あと言うとしたら、世界が重層化されることによって、その世界をプレイヤーが何度もじっくりとながめるようになるってことぐらいかな。

瀬上 : 重層化の話はだいたいわかりました。
 で、他には?
 
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2001-7-7
2002-1-8
2002-1-21

(C)Akito Inoue