ドラゴンクエスト [ #04 生活の積み重ね ] |
瀬上 : なるほど。その話は確かになかなかに現実味がある話ですね。 米島 : うーん、そうねぇ。だいたいはそんな感じだけど、ちょっと、「生活の場」に、関連した話で、次は単に「生活」の話になるんだけど。 瀬上 : はい。何が違うんでしょうか。 米島 : ゲームっていうメディアの強みの一つとしてね、生活を描く、ということがあるとオレは思ってるんだけど、まあ、その話はまた今度、話すけれどもね、ドラクエは基本的に主人公の生活を考えることを軸にして全体が作られていっている作品だと思っていて、堀井さんも言っていたけれども旅のエピソード、というのを考えるということがまず先にあって、ストーリーなんていうのは、その後に適当にくっつけていく、という手法をとってるらしいのよ。 瀬上 : そうですね。そこらへんはFFなんかと比べると正反対ですね。FFは大きな物語がまず先にありきですものね。 米島 : そうね。まあ、FFの全シリーズについて、そういう風に言うことはできないかもしれないけれど、まあ、傾向として、FFなんかの世界っていうのは全て一つの大きな物語を作り上げるための部分部分としてしか認識されないわけだ。だから、FFの町とか村人とかは全部、一つの大きな物体の付属品でしかないんだけれども、DQの場合はそういった如何にも物語的な構造性を拒否して、もっと独立した生活を勝手に生きている村人とか町とかがあって、という形で世界全体がすごいくっきりと立ちあがってるんだよね。 瀬上 : それは少し言い過ぎではないですか?確かに、FFの街とか村人とかっていうのは物語のただの付属品的な書かれ方をしていますけれども、ドラクエが全くそうじゃないか、というと、ドラクエだってそれなりに物語の付属品的な印象の薄い村や町は結構沢山ありますよね? 米島 : うん、ま、ちょっと言い過ぎかもしれないけど、説明としてはわかったでしょ?厳密にはくっきりそのとおりじゃないかもしれなけれども、大枠ではまぁだいたいそうだろうとは思えるでしょ?思えない? 瀬上 : うーん、まあ、だいたい。 米島 : はいはい。また今度も説明する予定だけれども、まず、何だか勝手に進んでしまう物語よりも、プレイヤーが世界の中で日常をすごしていく、という形のほうが世界に対しても、キャラクターに対しても、愛着を持ちやすいし、それに主人公に対してプレイヤーが自分を重ねて一体化しやすいよね。それにもうひとつついでに言えば、ドラクエの場合は、主人公が基本的にしゃべらないからプレイヤーと主人公の性格が乖離する、というようなこともないよね、あんまり。 瀬上 : んーー……?主人公が喋らないからプレイヤーと主人公の性格が乖離しないといういうのは、少し…… 米島 : ああ、まぁ「生活」の話との関連がつかみにくいかしらん? 瀬上 : いえ、まぁそれはなんとなくわかるんですけれど………つまりベラベラと愛だの勇気だの喋りながら生活を描くのは変だ、というようなことだと思ったんですけれど、「主人公が喋らないからプレイヤーと主人公が乖離しない」というのはどうも…… 米島 : ? 瀬上 : 例えばですよ、FFの場合は主人公がベラベラと喋ってしまうので、まあ僕とか米島さんみたいなプレイヤーは「この主人公の少年の発想には、ちょっと付いていけないぞ。オジサンは。」と感じるところがありますよね。 米島 : 主人公の少年の発想についていけないっつーか、シナリオの野島君の発想についていけない(笑) 瀬上 : まぁ、野島さんのことはおいておくとしてですね(笑) 米島 : ああ、はいはいはい。それは全くその通り。オレは感動も、共感もしたためしがないけれど、確かにFF7以降からのFFファンは特にそういう人が多いよね。 瀬上 : つまりですよ、主人公が喋らないからいいんだ、というのではなくて、主人公とプレイヤーの関係で一番最高級の理想的な関係というのはプレイヤーと主人公がぴったりと距離感を縮めて、ゲームの中に没入しているような状態であって、主人公が無口で喋らない、というのは可も無く不可も無く、みたいなことなんじゃないかな、と。 米島 : うーん、そうですなぁ。その通りだけど、それは生活の話とは関係が無いのでは…? 瀬上 : いや、ほら、だって「主人公がしゃべらないからプレイヤーと主人公の性格が乖離する、というようなこともない」というようなことを言うから…… 米島 : はい。すみません。言い方が悪かったです。あやまります。 |
2001-7-7 |
Page1 ドラクエファンクラブ
Page2 視点の重層化
Page3 生活の場
Page4 生活の積み重ね
Page5 世界の広さ
Page6 名前を覚えること
Page7 アフォーダンス・デザイン
Page8 見つめ返してくるもの
Page9 三種類の視線+1
Page10 最後に