ドラゴンクエスト [ #05 世界の広さ ] |
瀬上 : あい。 米島 : まあ、だいたい、こんなかんじかな。じゃあ次いこうか。 瀬上 : え、 米島 : 言ったじゃん。専門だって。 瀬上 : ええ。しかし、よく、こんなことを考えてますね……。 米島 : まあ、ヒマ人だから。 瀬上 : というか、オタク? 米島 : オタクじゃないから。 瀬上 : まあ、オタクの定義次第ですけど、 米島 : はい、じゃ、次行くよ、ダダダッと駆け足で。 瀬上 : はい、じゃあ、駆け足で。 米島 : まずね、「壮大な世界」とは言うけれども、町とか村の数はそこまで爆発的には沢山にはならないし、それに町とか村とかのなかも比較的小さくて全体構造がわかりやすいけれど、決して、「小さすぎる」という感じを与えないよね。全体構造を認識できながらも広い、という作りになってるわけね。 瀬上 : …それは何故? 米島 : うーん、まぁ、ひとつ単純な理由を挙げるとすれば「移動がのろい」ということがあるよね。多くのRPGがプレイヤーの利便性を考慮するのを重視して超高速飛行船とかを用意してしまったりするけれども、ドラクエの移動手段は遅いんだよね。他のRPGと比べると。歩く速度も。まぁ、歩く速度なんかは、ほんのちょっと遅いかどうかという程度ではあるけれど。 瀬上 : なるほど。つまり、そのある種の不便さみたいなものを逆にゲームの味みたいなものに転化していると? 米島 : うん、まぁそういうやり方をしていると。この不便さを味に転化する方法論というのはドラクエの他にも、あとグランディアだとか女神転生とかだともっと顕著に出てるよね。 瀬上 : ただ、思うんですけどぉ、その不便さとゲームの味というのとを天秤にかけた時にですよ、どっちがいいかと言われて便利な方がいいという人もかなりの数にのぼったりしません? 米島 : うーん。それはねぇ難しいこってすな。そんなの、なかなか統計的な調査なんてできないしね。まぁ不便さも度を越すとただの徒労にしか感じられないというのはあるから、どこまで不便にして、どこまで便利にするか、というバランスに悩んで悩んで、そのゲームにとってちょうどいいバランスを決定するということをしてゆくしかないよね。それにクリエイターの側がそうやって悩んでも、プレイヤーによってちょうどいいバランスってあるしね。一概にこれがいいんだ、と言ってしまうのが難しいというのは確かにあるけどね。 瀬上 : なるほど。まぁ、なかなか難しいぞ、と。 米島 : うん。まぁそうなんだけれども、ドラクエはそこのバランスっていうのが結構、最大公約数的に面白いと思える絶妙なラインをけっこう頑張ってついてきてるんじゃないかなぁ、とか。ね。まぁわかんないけど。そう、感じるんです、というだけの何の根拠もない話で恐縮なんだけど。 瀬上 : まぁ、その「バランスがいい」っていうのはドラクエは世間的に見てもすごい売れてる上に幅広い層に面白がられている作品だから、というので根拠が「ある」、と言っても悪くはないんじゃないでしょうか? 米島 : まぁ、悪くはないけど、「絶対そうだ」みたいなことはちょっと言えないよね。同じ売れてるっつっても、FFなんかは、そーんなにはバランスがいいとかなんて思わないし。 瀬上 : そうなんですか? 米島 : はいはい。FF3か。そうね、FF3はそうだわな。あれの手法っていうのは不便さを味に転化するという話ではないけれど、 瀬上 : そうですね。あれの場合の手法というのは今まで「全世界」と思っていた世界像をサラッと裏切ってしまってさらに広い世界を提示するというやり方ですよね。 米島 : そうそう。ああいうやり方をされると「やばい、むちゃくちゃ広いぞ、これは。」という感じになるよね。 瀬上 : ええ。なんかドラクエ4からの闇の世界はなんかやたらとちっちゃくなっちゃいましたけど、3はそんな感じでしたね。 米島 : うんまあ、それはそうだね。
瀬上 : うーん、そうですねえ、でもある意味、あれだと石版をうめる残りの数とかはくっきりと見えていますよね。その点、世界の広さがうらぎられるという感じは微妙だという感じがするんですけれど 米島 : そうなんだけどさぁ、なんていうだろうか、世界の広さを感じてゆく過程というのがさ、世界の全体像をあらかじめ与えられていて、それをしらみつぶしにしていく過程というのではなくて、また別のやり方を提示しえたというかさぁ、 瀬上 : でも、やっぱり「しらみつぶし」という過程であったことにはそんなにかわりないじゃないですか。 米島 : なるほどね。そうかも。「未知」の感覚というのは一番大きなものかもしらんね。 |
2001-7-7 |
Page1 ドラクエファンクラブ
Page2 視点の重層化
Page3 生活の場
Page4 生活の積み重ね
Page5 世界の広さ
Page6 名前を覚えること
Page7 アフォーダンス・デザイン
Page8 見つめ返してくるもの
Page9 三種類の視線+1
Page10 最後に