[ ゲームのいくつかの目標 ] |
米島 : 唐突だけど、ゲームを作る人間にとっての究極の目標、まあ、ゲームをやる人間にとっての究極の目標でもいいんだけれども、それって何だと思う?
瀬上 : え、ああ、はい。唐突ですねぇ。 米島 : そりゃそうかもしんないけれども、とりあえず今回は、まあ、それは無しね。
瀬上 : はいはい。ええとそれじゃあ、そうですねぇ 米島 : なるほど。それっていうのは、任天堂の人とかはけっこうそういう人は多いかもしれないね。あと、チュンソフトの中村(光一)さんとかも、そういう感じだよね。多分。
瀬上 : 実際に、任天堂は将棋版とか花札とか作ってますし、もともとはそういう会社ですからね。 米島 : そうかもね。うん。わかんないけど、そうかも。
瀬上 : 米島さんはどうなんですか? 米島 : オレはね、モニターの中に人工の擬似世界を作り上げてしまうことじゃないかと、思ってるのよね。それで、そこで人工の生命を生活させるのね。
瀬上 : ほう。じゃあ、そういう観点からすると、『シェンムー』とか『シムシティ』とか、AM2研、ウィル・ライトの作品とかっていうのは、そういうタイプの人工の擬似世界の究極系を求めているものですかね。 米島 : うん。そうだね。AM2研の作るゲームとかって基本的に現実世界のシミュレートというようなものがかなり多いしね。『F355』にせよ『バーチャファイター』にせよ。
瀬上 : よくできたRPG、アドベンチャーの作品とかはそういうものを求めたような作品が多いというような感じがありますね。 米島 : そうね。
瀬上 : それは何故? 米島 : うーん。何でだろう。そうだなあ、理由を問われても難しいけれど、自分の手でもう一つの世界を作り出すとか、生命を作り出すとかっていうのはすごくワクワクしない?
瀬上 : うん、まあ、確かにわかることはわかります。それができたら本当にすごいですよね。 米島 : でしょ。
瀬上 : でも、それってゲームなんですか? 米島 : うーーん。もしかしたら確かにキミの言う通りゲームにはならないかもしれないね。何をしなければいけなってわけじゃないし。『シェンムー』なんかも、人工の世界を作ったはいいけれど、何をプレイヤーにしてもらおうかって、なってしまって、そこの部分であんまりうまくいってなかったしね。
瀬上 : それは、やっぱり高望みしすぎですよ。明らかに。 米島 : いや、それはわかってるんだけれども、理想としてね。
瀬上 : はい。 米島 : そうね、言わば、その世界の中で生活をするためのルール。生活の文法だよね。勝つとか負けるとか、そういう問題ではなくて、その世界の中に住んで、「さて、何をしようか」ということだよね。
瀬上 : それに、そういうものを作ると言うのは、単純にかかるエネルギーが本当に大変ですよね。 米島 : まあ……シェンムー70億円だしね……。大変そうだよね、それは本当に。でもやっぱりこう、それだけのエネルギーをかけてでも、作りたい、作らなきゃ、というものだと思うんだよね、そういうのって。
瀬上 : そうなんですかね。 米島 : だって、『パンツァードラグーン』の世界に住むために、あなたの人生を半分かけないか、って言ったらその提案にのる人は結構いると思わない?
瀬上 : 人生の半分までかけるかどうかはわかりませんけれど、確かにやってみたいとは思わせますね。 米島 : あと、あなたの恋人を、あるいは友達をモニターの上に作り出すために、とかね。
瀬上 : インモラルだとか、言われそうですけれどね。 米島 : というと? 瀬上 : 例えばですよ、まず、パラレルワードが欲しいというのがありますよねぇ 米島 : うん。
瀬上 : そしてその世界に住みたい、と。
米島 : そうだねぇ。まぁ、他にもなんていうんだろう、色々あると思うけど、何かこう、単に擬似世界でしかないはずのゲーム内世界のことで真剣に悩むとかね、プログラムが単にONとOFFの関係の単純なものではなくて、すごく複雑な愛着の集合体みたいなもんになったらプログラムの人工知能というのがすごく大切な存在に思えてくるだろうしね。 瀬上 : あと、そうですねぇ、『空手バカ一代』じゃないですけど、ゲーム内世界での強さを求めて修行にあけくれるとか、 米島 : そうだねぇ、色々あるけれど、プロスキーヤーとか空手バカ一代もいいけれど、シムアントとかL.O.Lみたいに別の生命になっちゃうのがやっぱりいいなぁ。世界が全然違って見えるもの。あれはすごいよ。あれは絶対にすごい。他のメディアでやってたんじゃどうしたって追いつけないというすごさを感じるよ。だって、オレあれ、もう。蟻だもの。 瀬上 : 「蟻だもの」って言われても困るんですけど…… 米島 : だって言語化したいけど、それはもう言葉にできんのよ。 |
2001-7-8 |