『ゲームの話をしよう』 第一集、第二集 編集:永田泰大

 
 ファミ通の「ゲームの話をしよう」というコーナーが単行本化されたもの。
 コーナーの趣旨としては、ゲームに関する雑談というのがすごく面白いのにもかかわらずそういったものがどこにもとどめられることがなくただの雑談として文字になることもなく消えていってしまうというのがもったいないな、と感じたファミ通編集者の永田氏(風のように永田)がそういった雑談を、まさに雑談として記事にしていくコーナー。
 
 この本の魅力として、一つには宮本茂氏や中村光一氏などのゲームに関する非常に鋭く的を得た指摘が聞ける、というものだが、そういった部分も面白いが、個人的には、それよりもこの企画がとても優れていると思えるのは「テレビゲーム」というものが今どのようなひろがりを見せているのか、あるいはどういった層でどのような形で受容されていっているのか、ということが実感のこもった言葉として提示されていることだと思う。コアなゲームファンだとかクリエイターだとか、ただ一つの立場でゲームと関わっているだけではなかなか聞こえてこないような声が山積していて、自分自身とは別の受容のされ方というのがこんなにもあるものなのか、とハッとさせられる。
 今の小学生がどういった感じでゲームに接しているのか、とか、今までぜんぜんゲームに接したことのなかった30歳前後の夫婦がゲームを突然与えられたとき、どういうふうな反応を示すのか、とかそういったことっていうのは本当にこういう企画でもってひろいあげてもらわないと、なかなか雰囲気がよくわからない(とは言っても別にこの本は社会学的な調査とかをめざしているわけではないので、個々のインタビュー対象者が対象とする層をどこまで代表する人なのか、というのは厳密なものではないけれど)。他にも、小売店の人が発売前の作品のよさというのを情報としてなかなか仕入れることができない、と言っていたり、女性ゲーマーがゲーマーの話相手がいないとかいっていたり、格闘ゲームの世界にプレイヤーとして参入していけなくなってしまったとおやじゲーマーがなげいていたりする現状といのは、各々のゲーマー達はどのくらい認識しているのだろうか?あるいはクリエイターはどの程度まできちんと状況を把握しているのだろうか?
 個々のゲームの本質論なんかの部分にはいろいろと反論がないわけでもないけれど、とりあえずはこの本は強くプッシュしたい。テレビゲームについて考えようとしている人や、クリエイターの人にとってはかなり面白いはずだし、必読。ゲームについての視界が広がってゆくことうけあい。
 
 ただ、この本の難点を挙げるとすれば、5年後10年後に読んだら、状況としてはやっぱり古くなってしまっているだろうから、そうなってからこの本を読み返す価値がどこまであるのか、となるとそれはちょっとよくわからない。完全に意味のないものにはならないだろうけれども、「昔はこんな感じの受容のされ方だったのか」というような別の読み方になってくるかもしれない。(そういえば、このシリーズ雑誌連載から刊行されるまでの期間が長いような気がする……もう少しはやくしたほうがいいのではないだろうか)
 
 このサイトをはじめるにあたって、会話形式をとろうと思ったのは一つにはこの本がきっかけだったという部分もある。

 『ゲームの話をしよう』1300円 永田泰大 2000/2/28
  アスペクト刊 ISBN 4-7572-0662-3
 『ゲームの話をしよう 第二集』1300円 永田泰大 2001/10/12
  エンターブレイン刊 ISBN 4-7577-0173-X

(あと、ゲームの受容のされ方の多様性をさぐることが必要だと、強く感じている"ゲームを語ろう"の沢月さんなんかはもう少し社会学的というか統計的な形での調査の必要性を言っています。)
 
 
 
 
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copyright(C)Akito Inoue 2002.3.24