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2012年08月12日
■ゲーミフィケーション FAQ
ゲーミフィケーションについてよく聞かれる質問について、まとめました。
作成者:井上明人 ver:2012年8月12日
Q:ゲーミフィケーションって、どういう意味ですか?
Q:具体的にはどういった成功例が出てきているの?
Q:ゲーミフィケーションを取り入れればウッハウハですか?
Q:ゲーミフィケーションを取り入れればどんな人でも、どんな状況でもヤル気アップさせられますか?
Q:それ、ウマい話じゃなくないですか?
Q:じゃあ、ゲーミフィケーションを取り入れるには覚悟が必要ということですか?
Q:ゲームの要素を日常に取り入れやすくなった?って、どうして?
Q:日常の中のゲームって、今までだって、沢山ありましたよね?スタンプラリーとか。
Q:受験勉強も、ゲームのように楽しめます。これもゲームだと思いますが?
Q:成功例とされてる、「Nike+」とか、「badgeVille」とかやってみても、さっぱり面白くないんですけれど。
Q:「ランキング」で競争させたり、「バッジ」で人を釣れば、人が熱中する…みたいな話って、そりゃ、そういうこともあるとは思いますが、そんな簡単にいかないと思います。「ランキングを入れればみんな熱中する!」「それこそがゲーミフィケーション!」みたいな話って、すごくうそ臭いんですけど。
Q:いわゆる「ゲーム理論」と何が違うの?
Q:インセンティヴ設計や、メカニズムデザインの話とは何が違うのでしょうか?
Q:ゲーミフィケーションの本に書いてノウハウって、行動経済学、人間工学、認知心理学。社会心理学とかで言われていることと被りませんか?
Q:どこまでがゲーミフィケーションで、どこまでがゲーミフィケーションではないのでしょうか?
Q:「面白くする化」とか「遊び化」ではダメなの?
Q:でも、ゲーミフィケーション、と呼ばれている話のなかで特徴的な部分ってのはありますよね?
Q:もっと、ひどいものがゲーミフィケーションだと紹介されていることもありますよね?
Q:ゲーミフィケーションって1990年代だか、ゼロ年代にも言われてなかった?
Q:ゲーミフィケーションは「研究分野」なのですか?
Q:じゃあ、井上さんは、ゲーミフィケーションの研究者じゃなかったらなんなの?
Q:ちなみに、「ゲーム」って概念の定義はなんなの?
Q:ゲーミフィケーションは、今後どうなると思いますか?
Q:このFAQにゲームの要素がありません。このFAQにもゲームの要素をつけてください!
日常のさまざまな活動のなかにゲームの要素を取り入れていく行為のことです。
日本語で「ゲーム化」と訳されることが多いですが、「ゲーム要素の導入」と言う表現が一番しっくりくるかな、と思います。
この数年で、さまざまなITサービスでゲームの要素を取り入れた成功例が出現するようになり、注目される言葉になってきました。
勘違いされることが多いのですが、学問分野などとして出てきている言葉ではなく、ビジネス潮流です。
オバマの大統領選で活用されたり、ウェブページの集客に使われたりさまざまな成功例が出てきています。
詳しくは、拙著をお買い求めいただければ幸いです。
いいえ。
目的と、手法の選択を明確にし、かつ、まだ確立した手法ではないというリスクをご承知いただいた上で、取り組んでいただければとおもいます。
Q:ゲーミフィケーションを取り入れればどんな人でも、どんな状況でもヤル気アップさせられますか?
いいえ。
ケースバイケースです。ゲーミフィケーションに適した企業やプロジェクトはあります。
適したケースが増えてきている、というのが最近の状況です。
「昔と比べれば」「昔よりはだいぶ」うまい話になってきている、とご理解いただければ幸いです。
料理にたとえれば、ガスバーナーやのない時代に料理をするのよりも、
ガスバーナーのある現代のほうが、はるかに家庭での料理がやりやすくなった、というようなことだと思っていただければ思います。
(まだ、電子レンジとか、レトルト食品ほど便利なものは出てきていないですが…)
料理の目的をさだめずに適当に塩をガンガンふりかけて、具材を適当に放り込んでしまえば
謎の料理ができあがるだけですし、
料理の方向性をはっきりさせて、きちんと作りこめばうまい料理ができます。
そして、それはガスバーナーがあったほうが、ガスバーナーがないよりは遥かにやりやすいわけです。
ゲーム要素の日常への導入が、昔よりも、やりやすくなってきているのは確かだと思いますし、
新しいビジネス分野として、リスクをとって取り組むには価値のある分野だと思います。
Q:じゃあ、ゲーミフィケーションを取り入れるには覚悟が必要ということですか?
実際、ゲーミフィケーションそのものを主眼に据えたビジネスやサービスを展開される場合は、覚悟が必要だと思います。ただ、新規事業がうまくいくかどうか、というのは常にある程度は「賭け」になるわけです。その場合は、賭けるべき対象としてゲーミフィケーションが価値があるかどうか、という話になるかと思います。新規事業をやるときに賭けをする分野としての価値は、2012年現在の日本では、充分あるのではないかと思います。
一方で、既存のサービスにゲーミフィケーションの要素を取り入れること自体は、(ケースバイケースですが)、敷居は低いとおもいます。程度問題になりますが、「言われてみれば、これゲームっぽいよね」ぐらいの要素を導入する場合は、それほど高いリスクはないケースのほうが多いと思います。
ただし、社内であれば人事制度などに絡んでしまうような内容や、いかにもゲームっぽい仕掛けを展開する場合には、既存の仕組みとの相性や、ユーザー層とのマッチングをよく考えて展開する必要が出てくるか、と思います。つまり、リスクをご承知いただきたい、ということです。
Q:ゲームの要素を日常に取り入れやすくなった?って、どうして?
たとえば、スタンプラリーの場合、20年前なら、スタンプを駅ごと違うデザインを作った上で、スタンプを押すスペースを設け、駅員にも、お客さんにもスタンプラリーイベントを周知し、お客さんにはスタンプを押してもらうための「台紙」を用意してもらい……という非常に煩わしいことをしなければいけませんでした。
しかし、今ならば、GPS機能を利用したiPhoneアプリを開発し、それをユーザーに勝手にダウンロードしてもらえばいいだけです。スタンプだって、物理的に生産する必要はなく、画像データを用意すればいいだけです。とっても低コストですね。
これらは、GPSなどのセンサーの普及と低コスト化、SNSの一般化、iPhoneの普及、クラウドやBigDataといった潮流、数多くのAPIが公開されマッシュアップがしやすくなった状況…など、こうした背景が、日常のなかに、ゲームを取り込みやすくしています。詳しくは、拙著をお買い求めください。
Q:日常の中のゲームって、今までだって、沢山ありましたよね?スタンプラリーとか。
はい。ありました。日常の中にゲームの要素を入れる、という運動は昨日今日にはじまったわけではありません。
2011年から「ゲーミフィケーション」という言葉が盛り上がりはじめた理由は「今まで、日常の中にまったくゲームの要素を導入できなかった」ということではなく、「日常の中に、ゲームの要素を導入しやすくなった」ということです。程度問題だと思っていただければ結構です。
なぜ、導入しやすくなったか、というその理由については、さまざまな説明ができますが、ごく短く言うと、さまざまなIT分野の発展・普及によって下支えされています。
Q:受験勉強も、ゲームのように楽しめます。これもゲームだと思いますが?
世の中に、結果的に「ゲームとしての構造」を備えているものはたくさんあります。
受験勉強、株取引、部活動、料理…などです。
ルールがあり、なんらかの結果(報酬)があり、結果の不確定性があり、努力することで何かしらのフィードバックが返ってくるようなもの、というものはそれこそ、数え切れないほどあります。
ただし、それらは
半分の人には楽しめても、半分の人はストレスになってしまう、というようなことがあります。受験勉強は、楽しめる人にとっては面白いゲームですが、そうでない人にとっては、とても苦しいストレスの源になりますね。
世の中には結果的に「ゲームとしての構造」を備えたものはあっても、それらを誰かが設計・調整できるわけではなかったりすることが多いですね。
あるいは、構造設計がなされたとしても、ゲームの参加者にとっても公平な制度設計になるような調整がほどこされることは多くありましたが、多くの人が熱中できるような形で設計しなおそう、という運動はあまりありませんでした。
そういった多くの人にとって遊びづらいゲームを、遊びやすく熱中しやすいものにしようとするのが、ゲーミフィケーションという言葉で志されている立場です。
Q:成功例とされてる、「Nike+」とか、「badgeVille」とかやってみても、さっぱり面白くないんですけれど。
そういう人は多いと思いますし、そういうものなのだと思って下さい。
まず、大前提として、「ゲーム」という言葉がついているので、みなさん、マリオやドラクエをプレイするような気持ちで、「よし、これが面白いんだな?よし、やってやろうじゃないか」という感じで、過去の事例に挑戦していただく方が多いのですが、マリオやドラクエのように楽しむことは難しいとおもいます。
マリオなどは、どのような人がプレイしても、そこそこに面白いと思ってもらえるように、作られています。プレイヤーが何をやりたい人か、ということはある程度は関係しますが、どういう人でも楽しめるように作ることが、コンピュターゲームの作り方です。
しかし、ゲーミフィケーションは、そうではありません。
「Nike+」は、あらかじめランニングに興味を持ち、すでにランニングをしているような人にとっては面白い仕組みですが、そもそもランニングに興味のない人は面白いと思えません。
「BadgeVille」を用いたニュースサイトがあったとしても、たとえば、ゴム業界のニュースを発信しているサイトがあった場合、「もともとゴム業界のニュースに興味はあったか、そこまで定期的にニュースをチェックできていない人」のモチベーションをあげることはできます。しかし、「もともとゴム業界のニュースに興味がない人」に、ゴム業界に興味をもってもらうことは難しいです。
ですので、ゲーミフィケーションの「成功例」の楽しさ自体を、体験するのは、自分の興味がない分野での成功例をみても、正直ピンとこないことのほうが多いです。
私の場合も、Nike+をやってみても、正直ピンとこなかったので、 ランニングには興味がありせんでしたが、1:とりあえずまずNike+なしで、数日ほどランニングを行い 2:Nike+アリで、数日ほどランニングを行う、という手順を踏んでみました。
そうしたら、Nike+なしでランニングするよりも、Nike+アリでランニングをしたほうが、ランニングを楽しめました。
Q:「ランキング」で競争させたり、「バッジ」で人を釣れば、人が熱中する…みたいな話って、そりゃ、そういうこともあるとは思いますが、そんな簡単にいかないと思います。「ランキングを入れればみんな熱中する!」「それこそがゲーミフィケーション!」みたいな話って、すごくうそ臭いんですけど。
はい。そのとおりだと思います。
誤解があると思うのですが、
「ランキングやバッジを導入すれば、確実に人は熱中する」という主張をしている人はかなり胡散臭い一部の人だけだと思います。
「人を熱中させるために、ランキングやバッジなどのゲームの仕組みを取り入れると、(条件があえば)効果的だ」というのが、だいたいの場合の穏当な主張か、と思います。
ゲーミフィケーションの具体的な要素としてしばしば例に挙げられる、ランキングやバッジといった要素は、それで熱中する人もいますが、それだけ単に導入しても、虚しく空振るケースも多いと思います。
100人中、90人をきちんと熱中させる仕掛けを作ろうと思うと、ものすごく手間がかかります。そういうことをやる場合は、もちろん優秀な人材をあてて、予算、時間をそれなりに見積もる必要があります。億を越えるプロジェクトになることもあるでしょう。また、コストをかけたとしても失敗するかも知れません。トライアンドエラーで、何度も失敗しながら、いいものを仕上げていく。それは、ごくあたりまえに必要なプロセスであり、ゲーミフィケーションを使えば、簡単に成功できる、などといった話はどこにもありません。
ただ、「100人中、1人しか熱中してくれないもの」を、「100人中4人ぐらいが熱中してくれるぐらいもの」にするというのであれば、ランキングを入れてみるだけで効果がある、ということはあると思います。
数学や経済学におけるゲーム理論では、二人以上のプレイヤーがどのように相互行為のバランスを成立させていくか、ということが主要な論点となります。一方、ゲーミフィケーションでは「一人のゲームプレイヤーがどのようにして、ゲームにハマっていくか」ということの方が注目すべき要素になります。
Q:インセンティヴ設計や、メカニズムデザインの話とは何が違うのでしょうか?
メカニズムデザインなどでも確かに個々のプレイヤーの欲求の設計はするので、確かに似た話には聞こえると思います。
ただ、ゲーミフィケーションの場合は、外発的なモチベーションの調整よりは、内発的なモチベーションをどのようにしてよびおこすか、が主眼になります。
たとえば、電波オークションの設計手法などは、メカニズムデザインの分野のはなしだとは思います。電波事業者、電波の一般利用者などにとっての公平性がどのように保たれるように設計するか、ということがメカニズムデザインの話だと思います。
一方で、ゲーミフィケーションを考えている人間に電波オークションの制度設計をまかせるとすれば、ソフトバンクやKDDIのオークション担当責任者が、いかに退屈な仕事にハマるか、一般の携帯電話使用者がいかに効率的な電波の利用をすることにワクワクしてたまらなくなるか…みたいな制度を設計しようとすると思います。(実際に、できるかどうかは別にして)
Q:ゲーミフィケーションの本に書いてノウハウって、行動経済学、人間工学、認知心理学。社会心理学とかで言われていることと被りませんか?
はい。かなり被っています。
個別のノウハウは、既存の知見の延長線上です。ノウハウ自体は、そこまで新しいことを言っているわけではありません。
ただ、繰り返しになりますが、昔は、ゲームのノウハウを日常のなかに取りいれていこうと思うと、手段があまりなかったり、方法がしょぼかったわけです。
現在では、iPhoneや、SNSなど、人が活動する環境自体が、人がデザインした情報空間となってきています。
だからこそ、人間の行動環境をめぐるノウハウが活用しやすくなり、価値が高くなりました。それこそが2011年以後、運動がもりあがっている背景であり、個別のノウハウが「新しい」わけではありませ。新しいのではなく、昔よりもフォーカスされるべき重要なノウハウになった、ということが重要であり、ノウハウ自体がいきなり降って湧いてきた、という話ではありません。
Q:どこまでがゲーミフィケーションで、どこまでがゲーミフィケーションではないのでしょうか?
「○○の事例は、ゲーミフィケーションにあたるのでしょうか?」という質問をよくいただきますがその答え方は、大半の場合は、次のようなものになります。
A:ゲーミフィケーションだと呼びたければ、呼んでもいいと思います。最近の潮流にあった事例だと思います。お任せします。
B:ゲーミフィケーションだと呼びたければ、呼んでもいいと思います。ゲームの要素はあると思います。ただ、とりたてて言うべきかどうかは、お任せします。
たとえば、「ニコニコ動画はゲーミフィケーションにあたりますか?」「はてなスターはゲーミフィケーションにあたりますか?」「AKB48はゲーミフィケーションをやっていますか?」と質問されれば、そうだとは思います。ゲーム的な要素は、ばりばりにあると思います。
でも、「○○こそが、ゲーミフィケーションにとって本質的な要素だ!」みたいなタイプの議論をすることに、何の意義があるのか、私はよくわかりません。ゲームの要素を幅広く、活用していこう、という社会運動かつビジネス潮流なのだと思っていますので。
そういう運動にしてもいいのではないか、という意見もあります。
何かにゲームの要素を取り入れよう、という時、ゲームの要素を取り入れる、というのはあくまで一つの手段であり、選択肢です。単にゲームの要素を取り入れることが重要なのではなく、きちんと楽しんでもらう、ということのほうが最終的には重要なので、「ゲーミフィケーションよりも面白くする、ということのほうが重要」という意見を言う人もいます。
それは、一理あると思います。
その意味で、「面白くする化」は重要なことではあります。しかし、これを「ITの潮流として、サービスを面白くすることが流行っている」ということを言えるか、どうかと言われと、それは違うだろう、と思っています。
「ゲーミフィケーション」という言葉がなぜ流行ってきたのか、は繰り返しになりますが、ゲームの要素を取り入れるためのインフラコストの低下、というのが重要な背景です。ゲームの要素を取り入れることは、何かを「面白くする」ための多様な選択肢の一つにすぎません。物語、ギャグ、アート、音楽…など様々な道具立てがあり、いずれも重要です。しかし、物語や、ギャグをITサービスなどに取り入れることがやりやすくなった…という技術的背景といったものが、ここ数年で存在したとは思っていません。サービスの中に取り入れやすくなったのは、「ゲーム」です。ゲームを取り入れるためのインフラは、実際に低コスト化しました。
なので、「ITの潮流として、ゲーミフィケーションが流行っている」ということは言えても、「面白くする化」が流行ってきている、とは思いません。
私見ですが、「面白くする化」が流行るのは、Augmented Reality(拡張現実)技術とかが、今よりももっと扱いやすくなった場合とかではないでしょうかね。そうなった時には、「面白くする化」でも「遊び化」でもいいのではないでしょうか。
Q:でも、ゲーミフィケーション、と呼ばれている話のなかで特徴的な部分ってのはありますよね?
論者によって議論のわかれるところですが、たとえば、下記のようなものはゲーミフィケーションに含まなくてもいい、という論者は多いです。私もけっこう、そうだなぁ、とは思ってはいます。
・ゲームの中に広告を入れこんでいるだけの「アドバゲーム」や
・会社の中で強制的に、競争させられる成果主義のゲーム
・ゲームのなかでぼんやりとした勉強をしておわるだけで問題解決にはつながりにくいタイプの「シリアスゲーム(非エンターテインメント目的のゲーム)」
などは、微妙な範囲にはなると思います。
あと、ゲームのユーザーインターフェイスの設計ノウハウや、ゲームの最終バランス調整のノウハウの部分なんかは、あんまりゲーミフィケーションの話では、主要なポイントではないですね。私個人が、何かを言う時は、上記のようなケースはほとんど含んでいません。
ただ、アドバゲームなどが「ゲーミフィケーション」と呼ばれている場合、若干、複雑な気持ちにはなりますが、特に「それは違う!」とかいう批判を直截にすることは、ありません。批判をする方もいらっしゃいます。
Q:もっと、ひどいものがゲーミフィケーションだと紹介されていることもありますよね?
はい。今までで驚愕したのは
「ゲーミフィケーションって、iPadや、iPhoneを使って勉強することっスカ?」というご質問を、某テレビ局の方からいただきましたが、さすがにそれは全く違う、と思いました。
あと、某雑誌で、チャターや、ヤマーといった社内SNSツールのことを「これこそゲーミフィケーション!」と呼んでいることがありました。
いくら積極的な定義をしない、とは言っても、さすがにそれは「ゲームの要素を取り入れること」じゃなくて、ただのツールの話ですので、ツールの話ではなく、行為の話だとは思います。
Q:ゲーミフィケーションって1990年代だか、ゼロ年代にも言われてなかった?
たぶん、それは、次の言葉のうちのいずれかと勘違いなされているか、と思います。
・ゲームニクス:立命館大のサイトウアキヒロさんの提唱した用語。ゲーミフィケーションとかなり被るが、主にゲームのノウハウの重要性を説いた議論。
・ゲーミング&シュミレーション:数十年前からあります。ゲームの均衡などを体験させることを主眼にすえた、ゲーム・メカニズムの応用の話です。学会もあります。
・シリアスゲーム:「ゲームの要素を取り入れること」ではなく、「非エンタテイメント目的でのゲームを作ること」です。2000年台前半ぐらいから盛り上がりました。
・ARG:Altenate Reality Gameの略です。
その他にもエデュテイメント、教育ゲームなどさまざまな取組みや運動がありました。2012年現在、ある程度のもりあがりを見せているのは、繰り返しになりますが、ノウハウの新しさ以上にインフラコストの低下、ということが大きな要因です。
少なくとも、私(井上)にとっては、違います。ゲーミフィケーションは、研究分野ではなく、実践的な運動として意味合いが強いと思っています。
ですので、私は、「ゲーム研究者ですが、ゲーミフィケーションの研究者ではありません」と、繰り返し、繰り返し、申し上げております……が、「ゲーミフィケーションの研究者の井上さんです」と紹介され、「ゲーミフィケーションなんて、研究とは言えないじゃないか!!」というご批判をいただいたりしておりますが、私は自分の口から、研究だと申し上げたことは一度もございません。
「研究分野」となるためには、研究として明らかにしたいこと、対象範囲、研究の手法…といったことを考える必要がありますが、ゲーミフィケーションは実践的には2012年現在において重要なものですが、運動としての広がりが、よくも悪くも境界がぼんやりとしております。「研究」として組織化・手法化していくということをすることのメリットよりも、実践的なメリットのほうが大きいというのが現状だと思っています。
Q:じゃあ、井上さんは、ゲーミフィケーションの研究者じゃなかったらなんなの?
「ゲーミフィケーションの実践家」「推進者」とでも呼んでいただければ結構です。研究者としての仕事だ、自分の中では、現時点では位置づけていません。
もし、記事等で、「ゲーミフィケーション研究者の井上氏」等の記載がありましたら、それらは全て私が原稿チェックをしていないものです。誤解をさせてしまい申し訳ありません。
おっと…その質問は、「研究者」としての私の話になるので、なんか、細々とした話をすることになりますが…
細々とした話にがっちり、ご興味があるようでしたら、下記URLをご覧ください。
http://www.critiqueofgames.net/data/vol.13_inoueakito.pdf
http://www.critiqueofgames.net/rgn/u/
(昔書いたものなので、またもう、今とはちょっと考えがすこし違っていますが…)
はやり言葉として「ゲーミフィケーション」が騒がれているという状況自体は一時的な現象だと思います。
日本国内では、今ひとつパっとした事例が出てきていないので、海外よりも若干遅れてしまったり、バッシングされたりするかもしれません。
言葉の流行り廃り自体は一時的な現象だと思います。
しかし、「ゲーム」と相性のいいITインフラのコストが低下し、かつ、そうしたインフラの普及が今後すすんでいく、ということ自体は大きな潮流として止まらないだろうと思います。
ですので、10年、30年といった長期でみれば、ゲーミフィケーション自体は確実に、浸透していく現象だと思います。
Q:このFAQにゲームの要素がありません。このFAQにもゲームの要素をつけてください!
無限のエネルギーがあれば、頑張りますが、ゲーミフィケーションを実践するのにもエネルギーがかかりますし、最近、夏バテで弱っておりますので、ご容赦ください……
#あと、最後に宣伝ですが、
ここまで読んだ人は、せっかくなので本を買ってくれると、嬉しいです。